新聞記事
令和5年12月21日 建設通信新聞
建設通信新聞

品確法改正案の骨子案提示
スライドを発注者の責務に
自民議連がPT初会合

24年問題で受注者と国の
対応追加
測量法改正 検討視点も

自民党の「公共工事品質確保に関する議員連盟」(会長・根本匠衆院議員)は20日、東京都千代田区の参院議員会館で「公共工事品質確保法改正プロジェクトチーム(PT)」の初会合を開き、公共工事品質確保促進法(品確法)改正案の骨子案をまとめた。公共工事のスライド条項設定・運用を国、地方自治体など発注者の責務に位置付ける。時間外労働の上限規制が建設業に適用される「2024年問題」を踏まえ、受注者と国の対応も追加する。議員立法として24年の次期通常国会への提出を見据えており、引き続き検討を深める。測量法改正に向けた検討の視点も提示した。

11月の品確議連総会で建設業関係9団体に実施したヒアリングを基に、建設現場が直面する課題を▽品確法での検討事項▽建設業法などでの検討事項▽その他施策対応での検討事項−−の三つに整理。品確法での検討事項を対象に、必要な対応の方向性を示す骨子案をPTに提示した。初会合で根本会長は、働き方改革が産業界に与える影響の大きさを説いた上で、「24年問題への対応が新3K(給与・休暇・希望)の新たなエンジンになるように、前向きに対応したい。産業政策をリードする品確法として、必要な法改正をしていく」と述べた。

骨子案の主な内容を見ると、適切な価格転嫁を推進する観点から、公共工事標準請負契約約款の第25条に規定しているスライド条項について、適切な設定、運用基準の策定、契約締結後の適切な請負代金変更を発注者の責務に位置付ける。

24年問題を踏まえ、4週8休をベースとした週休2日の適切な実施に向け、技術者や技能者らの労働環境改善に関する受注者の努力義務規定で、受注者が改善に取り組む労働条件の例示に休日を加える。併せて、公共工事実施者(下請負人を含む)の実態を把握した上で、休日取得や賃金支払いに関し、国が公共工事従事者の適正な労働条件確保に必要な施策の策定と実施に努めることを新たに定める。

地域の守り手である地域建設業を存続させる観点から、競争参加資格、発注規模などの適切な設定を発注者の責務に位置付ける。公共工事を請け負う建設企業が少ない地域など、競争が存在しない状況が継続すると見込まれる公共工事を対象に、競争が存在しないことを確認した上で随意契約を締結できることも追加する。

また、高度な技術の研究開発に向けて「技術提案の審査および価格等の交渉による方式」を活用した民間事業者らの連携促進を国の努力義務にするなど、技術開発の推進や新技術活用に関する規定を加える。GX(グリーントランスフォーメーション)の視点でも、必要な対応を追加。公共工事の品質確保に当たり、工期、安全性、生産性、脱炭素化など価格以外の要素を含め、総合的に最も価値の高い新技術、資材、機械、工法などの活用が配慮され、その活用に必要な費用を予定価格に反映させることを法の基本理念と発注者の責務に位置付ける。

PTは品確法改正のほか、過去の品確議連総会で改正を求める声が上がっていた測量法について、改正検討の視点を示した。測量士・測量士補の確保に向け、養成施設の要件見直し、学位授与機構による学位授与者への資格付与、測量士・測量士補試験を受験しやすい環境の整備を検討する。測量成果など提供の電子化、測量業の登録に関する暴力団排除規定の整備も議論する。両法改正の検討と並行して、技術職員が不足する市町村を念頭に、公共工事発注者の発注体制整備への支援を検討することも明らかにした。

PTの初会合では出席した議員から、骨子案に賛成する声が多く上がったほか、人材確保・育成の取り組み、外国人労働者への対応、地方自治体への法のさらなる浸透などの検討も必要と指摘する意見があった。PTの座長に就いた佐藤信秋品確議連幹事長(参院議員)は、全3回程度の会合開催で議論を取りまとめる考えを示した。