177回国会 本会議 代表質問 第21号
2011年6月13日(月)午後3時1分開議
 

本日の会議に付した案件
◇特別委員会設置の件
◇東日本大震災復興基本法案(趣旨説明)

衆議院議員(黄川田徹君)

ただいま議題となりました東日本大震災復興基本法案につきまして、提案の趣旨及び内容を御説明申し上げます。

本案は、今回の東日本大震災の被害が甚大で、かつ、その被災地域が広範にわたり、極めて大規模なものであり、地震及び津波並びにこれらに伴う原子力発電施設の事故による複合的なものであることに鑑み、東日本大震災からの復興の円滑かつ迅速な推進と活力ある日本の再生を図ろうとするものであります。

本案は、衆議院に設置された東日本大震災復興特別委員会におきまして、去る六月九日、委員会提出の法律案とすることと決し、翌十日の衆議院本会議で可決されたものであります。

次に、その主な内容を申し上げます。

第一に、東日本大震災からの復興の基本理念として、新たな地域社会の構築とともに、二十一世紀半ばにおける日本のあるべき姿を目指して行われるべきこと、被災地域の住民の意向を尊重し、あわせて女性、子供、障害者等を含めた多様な国民の意見が反映されるべきこと、原発事故による被災地域の復興については、復旧状況等を勘案しつつ、これらの事項を行うべきこと等を定めております。

第二に、国及び地方公共団体は、この基本理念にのっとり、復興に必要な措置を講ずる責務を有することとしております。

第三に、東日本大震災からの復興に関する基本的施策として、資金の確保に関して、徹底的な歳出削減、財政投融資に係る資金や民間資金を活用するとともに、復興債を発行すること等を定めているほか、政府は、復興の推進を図るため、復興特別区域制度について、速やかに法制上の措置を講ずることとしております。

第四に、内閣に、内閣総理大臣を長とする東日本大震災復興対策本部を置き、地方機関として、関係府省の副大臣等を長とする現地対策本部を置くとともに、本部に東日本大震災復興構想会議を置くこととしております。また、内閣に、復興施策の企画立案、総合調整、実施等を行う復興庁を期間を限って置くこととし、政府は、その設置について可能な限り早い時期に法制上の措置を講ずることとしております。なお、復興対策本部は復興庁の設置の際に廃止することとし、本部の組織の機能は復興庁の組織に引き継がれるものとしております。

以上が、この法律案の提案の趣旨及び内容であります。(拍手)

議長(西岡武夫君)

ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。佐藤信秋君。

〔佐藤信秋君登壇、拍手〕

佐藤信秋君

佐藤信秋

自由民主党の佐藤信秋でございます。

私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となりました衆議院東日本大震災復興特別委員会委員長提案の東日本大震災復興基本法案について、この法案の成立を花道に菅総理に御退陣いただくことを切望しながら、以下、質問申し上げます。

まず、今回の大震災でお亡くなりになられた皆様と被害を受けられている全ての皆様に心よりお見舞いを申し上げます。

今回、この基本法案について御尽力された黄川田徹委員長始め、関係の皆様に敬意と感謝を申し上げます。我が党の提案も大部分取り入れられました。この基本法により大震災からの復興の推進と、日本の再生を図る糸口が見出せるようになると信じますが、まず最初に総理の御認識を伺います。

大震災発生後、既に三か月、復旧・復興は余りにも進んでいません。自民党は大震災発生以来、政府に対して多くの提言をいたしてきました。特に緊急対策として、被災者が安心し、自治体等が迅速に事業を実施できるよう、予算措置を始め国が最後まで責任を持つべきであると一貫して申し上げてまいりました。私は、総理御自身が責任も費用も国が持つと明確にすべきだったと思います。地方公共団体も困り切っているのです。第一次補正予算でも、災害救助や復旧事業等において地方の負担が約〇・七兆円とされています。後で交付税等で措置されるといっても、当面、公共団体は借金をしなければいけません。そのほかにもたくさんの費用が必要です。

なぜ、三月十一日以降、直ちに国が責任を持って大震災からの復旧も原発事故の収束も行うという緊急事態法をまとめて立法化を図らなかったのか、総理の御見解を伺います。

また、総理というお立場ですから、何事にも単なる思い付きではなく、実行する裏付けが必要です。

例えば、総理が提唱された高台への移転、エコタウンづくりにも地方財政上の問題があります。事業を行うべき市町村は、当面、相当の程度の借金をしなければいけません。市町村長の多くは、自らの財政が大丈夫かとためらっています。一方、自力で家を新築できる住民は少ない。住民は高齢化し、自らローンを組めない人が多く、公営住宅に頼らざるを得ません。総理の思い付きを生かすには、様々な特別の配慮、特に公営住宅建設に対する地方負担への財政措置等が必要と考えますが、総理の御見解を伺います。

佐藤信秋

次に、瓦れき、ヘドロの処理対策についてお尋ねします。

瓦れきは二千五百万トンもあり、ヘドロはこの数倍に達するであろうと言われています。ヘドロは感染症や肺炎の原因になり、被災地ではこれらの処理には数年、数兆円掛かると心配されています。

また、この対策は、災害廃棄物処理としては市町村の事業であり、住宅周辺の障害物除去としては県の災害救助事業です。国が補助しますが、市町村、県それぞれにも財政負担が生じます。ところが、事業としては一緒にまとめて実施せざるを得ないんです。国が費用を全額持つから、誰でも実行できる公共団体がやってくださいという強いメッセージが必要なのです。総理の御見解を伺います。

自衛隊、警察、消防等多くの皆様が危険を顧みず、また苦労をいとわず、大変な御活動をいただいております。御苦労に心から感謝しております。ここでは、高い職業倫理と、責任は国が持つということが生きていると感じております。国の出先機関もまた同様であります。一例として、大震災発生後すぐに国土交通大臣がお出しになった指示がマスコミ等で良かったと取り上げられています。

そこで、国土交通大臣にその指示の内容について伺いたいと思います。

被災地が復興していくためには産業が立ち直らなければなりません。特に、水産業は基幹産業であり、漁業者も関連産業も大きな打撃を受けました。また、農業においては、塩害や放射性物質に汚染された土壌をどうするかが大きな問題です。さらに、自らも被災しながら、地震発生後直ちに緊急復旧作業に身を粉にして従事されている建設産業の再生も急がれます。

地方自治体自体が被災者であり、また復旧には時間が掛かる現状では、国の大幅な関与が欠かせません。どのように東日本の被災地の産業、暮らしを再建していくか、国としての基本的方向を簡潔に、一言で結構ですから、一言で結構です、お聞かせください。

被災地の復興を進めるために、この基本法案では復興庁を設置することとしていますが、提出者にその設置時期の方針についてお尋ねします。

復旧・復興に向けて、地域の力を引き出すために最前線の地方公共団体の職員の増員も不可欠です。本格的な人的支援に向けて、言葉だけではなくて、総理の対応方針を伺います。

佐藤信秋

次に、東電の原子力発電事故の損害賠償について伺います。

二次にわたって指針が策定されておりますが、まだまだ広範な損害が残っています。また、政府は個別の交渉は被害者と東電がするとしていますが、被災者が東電と直接交渉するのは困難であります。

補償については国が責任を持たなければいけません。一刻も早く具体的な補償対象を決定していくこと、また、賠償を含めた被災者の問合せに一括して答える行政のワンストップ化も必要です。総理の御回答をお願いいたします。

最後に、質問ではなくて要請であります。

私どもは、本法案の成立に尽力いたします。また、国、地方共に必要となる財源対策や日本全体の雇用の確保、経済の底上げも必要不可欠です。まずは、第二次補正予算を早期に編成する必要があります。

困難は山積みし、時間と必死の努力が必要です。軽々しく、いつまでに一定のめどを付けるなどとは言える状況ではないでしょう。そもそも一定のめどなるものは、どうとでも言えるものだから、混乱のもとになっているだけです。何よりも、国が責任も費用も持つから安心して一丸となって復旧・復興に向かいましょうと国民にメッセージを届けなければなりません。国会議員は党派を超えて、この大震災と原発事故が子供たちの未来に影を落とすことのないように、また、日本を再建するために皆で身命を賭して取り組み続けなければなりません。

そのためには、菅総理、ペテン師とまで呼ばれて、鳩山前総理にまで、不信任案に賛成しておくべきだったとまで言われている菅総理のあなたの存在が障害となります。一刻も早く退陣されることが日本の復興への最大の寄与だと断言して、私の質問を終わります。(拍手)

〔衆議院議員後藤祐一君登壇、拍手〕

衆議院議員(後藤祐一君)

復興庁の設置時期についてのお尋ねでございますが、政府から提出された閣法においては、復興基本法の施行後一年以内を目途として必要な法制上の措置を講ずると附則に規定されておりました。

ただ、これでは余りに遅過ぎるという御提案を自民党、公明党の皆様からいただきました。そして、我が党の中でも、これでは遅い、復興庁をしっかりつくると明記すべきだという御意見が多かったんです。そこで、与野党協議の場においてこの政府案を修正いたしまして、この法案の附則ではなくて本文の中で、二十四条五項という形で、できるだけ早期に設置することとし、政府は可能な限り早い時期に法制上の措置を講ずるものとすると規定させていただいたところでございます。

その具体的な意味としましては、先ほど総理からも答弁あったところでございますが、政府において遅くとも年内にこの復興庁の業務の全体像について成案を得ていただいて、速やかに復興庁設置法案を国会に提出いただきます。そして、法律が成立次第できるだけ早く、二十三年度中にも設置できるよう努力いただくという意味でございます。

ただし……(発言する者あり)そうなんです、遅いんです。復興庁が設置されるまで、復興施策が滞ることがあってはいけません。政府においては、この復興基本法の公布、施行後、直ちに東日本大震災復興対策本部を設置していただいて、本部の下で必要な復興施策をスピード感持って進めていただくものと考えております。

このほかにも、たくさんの野党の御提案を踏まえさせていただきました。とにかく早く、いい内容の復興基本法になるようにまとめさせていただいたつもりでございます。

どうぞよろしくお願い申し上げます。(拍手)

〔内閣総理大臣菅直人君登壇、拍手〕

内閣総理大臣(菅直人君)

佐藤信秋議員にお答えを申し上げます。

まず、復興基本法に基づく復興の推進についての御質問をいただきました。

まず、与野党間で大局的な見地から復興基本法の在り方について精力的に御議論をいただき、東日本大震災復興基本法案を取りまとめていただいたことに改めて感謝を申し上げます。

同法案については、政府・与党案、自民党案、公明党案の良いところを取り入れることにより、東日本大震災からの復興のための基本方針として、より充実したものとなったと考えております。法案成立後は、速やかに復興対策本部及び現地対策本部を立ち上げ、切れ目なく復旧・復興事業を継続していくとともに、本格的復興に向けて全力で取り組みたいと考えております。

御指摘のように、基本法による復興の推進が日本再生の糸口となると考えており、各党各会派におかれましても、是非とも御協力をお願い申し上げます。

次に、緊急事態法についての御質問をいただきました。

まず、今回の震災対応については、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえて改正された現在の災害対策基本法に基づき、内閣総理大臣を本部長とする緊急災害対策本部を直ちに設置をいたしました。また同時に、原子力災害対策については、ジェー・シー・オー事故、この平成十一年九月の教訓を踏まえて制定された原子力災害対策特別措置法、これが平成十一年十二月に制定されておりますが、これに基づいて原子力災害対策本部を直ちに設置いたして、こうした対応によって政府一丸となって全力で取り組んできているところであります。

御指摘の緊急事態法制については、私も必要性を感じております。しかし、当面の震災対応、原発対応が落ち着いた段階で、今回の教訓を踏まえてしっかりと緊急事態法制については議論をすることが適切だと考えます。

また、地方公共団体の財政負担については、第一次補正予算において国費による手厚い財政援助を行った上で、なお生じる地方負担については、地方債や交付税による財政措置を拡充し、地方公共団体の取組を支援してまいっておりますし、これからも支援してまいりたい、このように考えております。

次に、復興のための地方負担への配慮についての御質問をいただきました。

被災した自治体への支援については、復興構想会議で先般決定された復興構想七原則において、地域・コミュニティー主体の復興を基本とし、国は復興の全体方針と制度設計によってそれを支えることとされているところであります。同会議では、御指摘の高台移転やエコタウンづくりなどを含め様々な議論が行われているところでありますが、いずれにしても、迅速、着実な復興には自治体への支援が不可欠であり、地方への必要な財政措置はしっかりと行ってまいりたいと考えております。

次に、瓦れき、ヘドロ対策の全額国庫負担に関する御質問をいただきました。

瓦れきやヘドロの処理対策に要する費用については、全額国が負担するための措置がとられております。今回の震災における瓦れきやヘドロの処理については、住宅周辺にあるものを含め、市町村が災害廃棄物処理事業として実施しているけれども、市町村の実態によっては必要に応じて市町村から事務委託を受けた県が実施する場合もあります。一次補正予算においては、市町村であれ、事務委託を受けた県であれ、実質的に負担が生じないよう、財政面からの支援を措置したところであります。被災地の瓦れきやヘドロの処理が迅速に進むよう、国としても最大限の対応を行ってまいります。

次に、被災地の産業、暮らしの再建についての御質問をいただきました。

被災地の復旧・復興については、御指摘のように、自治体の意見を尊重しつつ、国が積極的に関与していくことが必要であり、瓦れき処理や仮設住宅についても国が先頭に立って取り組んでいるところであります。被災地の産業、暮らしの再建については、現在、復興構想会議において、農林水産業を始め各種産業の復興について様々な御意見が出ているところであります。また、一昨日、釜石に出かけましたら、氷さえ手に入れば漁業が再開できるということで、そういったことに対しても二次補正等で措置をすることが必要だという議論が出たところであります。

間もなくこうした復興構想会議の提言もまとめられることになりますが、必要な対策は一刻も早く取り組むという方針の下、被災地の産業再生や暮らしの再建に向けて、国が先頭に立ってできるものから実行していくという、こういう覚悟で取り組んでいるところであります。

次に、被災地方公共団体への人的支援についての御質問をいただきました。

政府においては、被災自治体の体制を強化するため、国家公務員については六月六日現在で五百四十二名、延べにすると約四万二千名を、そしてまた、地方公務員については各自治体が独自に職員を派遣しているほか、全国市長会、全国町村会の協力を得て、五月三十一日現在で千十七人の市町村職員の派遣を決定いたしているところであります。

今後は短期から中長期の職員派遣の要請が増えてくるものと考えられておりますが、これらの仕組みを十分に活用し、被災自治体のニーズを踏まえ、被災自治体において必要な体制が構築できるよう全力を挙げて支援してまいります。

次に、東京電力福島原子力発電所事故による原子力損害賠償についての御質問をいただきました。

原子力損害紛争審査会の第一次指針では政府による避難等の指示に係る損害等が、第二次指針では風評被害のうち差し当たって相当因果関係が認められる損害等が賠償の対象となるとされたところであります。今後、更に詳細に調査検討を行い、七月ごろをめどに精神的損害などを含め全分野をカバーする中間指針を取りまとめていただきたいと考えております。

今回の原子力損害賠償については東京電力が一義的な責任を負うべきものでありますが、国として被害者の方々が適切な賠償を受けられるよう万全を期してまいります。被災者と東電との交渉についても、被災者の置かれた立場を踏まえ、所要の支援や東電に対する指導を行ってまいります。

また、行政のワンストップ化については、原子力災害対策本部の下、現地対策本部等が設置されており、賠償を含めた被災者の方々向けの支援が一元化、円滑化されるよう体制の充実や国民への周知を行ってまいります。

残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)

〔国務大臣大畠章宏君登壇、拍手〕

国務大臣(大畠章宏君)

佐藤議員の御質問にお答えを申し上げます。

東日本大震災発生後の私の指示内容について御質問をいただきました。

地震発生後、直ちに国土交通省緊急災害対策本部会議を開催し、仙台市内にある東北地方整備局及び東北運輸局とテレビ会議を通して現地の状況について報告を受けました。現地からの切実な報告を受けて、予想をはるかに超える大規模災害であることを強く感じ、緊張感を覚えました。

そこで、全てに優先して人命救助を第一義として、被災者の救援活動、それから被災状況の早期把握と緊急対応に全力を挙げることを要請いたしました。特に、東北地方整備局の徳山局長には、局長の判断が私の判断として、国土交通省の所掌にとらわれず、また、予算を気にせず、被災地と被災者の救済のためにやれることは全部やり切っていただきたいと伝えました。また、全国の地方整備局等に対して緊急災害対策派遣隊、テックフォースを出動し、被災地の支援を行うよう要請をいたしました。

今回の災害では、地方整備局の庁舎が被災をし、さらに職員やその家族も被災する中で、職員が一丸となって災害対応に取り組んでいただきました。心から感謝をしております。

今後も、被災者救済と地域の復旧・復興に向けて全力で取り組んでまいります。(拍手)