第211回国会 参議院 決算委員会 議事録
2023年6月12日(月)
 
令和三年度決算
◇締めくくり総括質疑

委員長(佐藤信秋君)

令和三年度決算外二件を議題とし、本日は締めくくり総括質疑を行います。

まず、私が決算委員長として総括的な質問を内閣総理大臣にいたします。

三つ質問、御要望を申し上げます。

一つ目は、次なる感染症危機への備えについてであります。

新型コロナウイルス感染症は、本年五月八日、指定感染症としての位置付けが五類感染症に変更されるなど、一定の落ち着きを得る状況となりました。

本委員会においては、会計検査院からの決算検査報告等を踏まえ、新型コロナウイルス感染症対策予算全体の執行状況や病床確保事業、ワクチン接種事業などについて質疑が行われました。いずれの事業も国民の命と健康を守る意味で重要な事業であったわけですが、緊急時に起案、実施したため、制度や予算について見切り発車であった部分も一部見受けられたことは否めません。

例えば、ワクチン接種事業について、当初、市中の医療機関における個別接種が進まないなどの課題がありました。令和三年度の接種回数の合計は二億五千七百六十二万回にまでに及びましたが、月別の推移を見ますと、三年四月は三百二十六万回の接種にとどまっています。そこで、時間外、休日にワクチン接種した場合の費用の上乗せ措置や、一日五十回以上のワクチン接種を行った病院、診療所に対する都道府県を通じた支援措置等が講じられた結果、六月には三千六百四十八万回と十倍以上になりました。

ワクチン接種回数を増加させるためには個別接種を行う医療機関に対する支援が必要であったにもかかわらず、当初、支援措置が十分ではなかったことは反省すべきです。

また、政府の接触確認アプリCOCOAについても、不具合の発生から機能停止に至る経緯について問題点が多くありますが、平時からの備えがなされていなかったと言えます。

今期国会において国立健康危機管理研究機構法が成立し、いわゆる日本版CDCが設立されることとなりましたが、その設立までにはしばらく時間を要します。

政府においては、感染状況に一定の落ち着きが見られている今の時期にこそ、これまでに実施された新型コロナウイルス感染症対策を総括し、改善すべきことを早急に実施し、今後いつ来るとも分からない次なる感染症危機に備える体制を構築すべきです。

次なる感染症危機への備えについて、総理の所見を伺います。お願いします。

佐藤信秋

○内閣総理大臣(岸田文雄君)

若い世代のこの結婚をめぐりましては、男女共に多くの方が、いずれ結婚することを希望しながら適当な相手に巡り合わない、あるいは結婚資金が足りないなどの理由でその希望がかなえられていない状況があり、これがこの婚姻件数の減少や未婚化の主な原因であると考えております。さらに、希望どおりの人数の出産、子育てが実現できていない、こういった状況にもあります。このため、若者の経済的な不安定さや共働き、共育てをしにくい労働環境など、結婚の希望の実現を阻む障壁を一つ一つ取り除いていくことが重要です。

先般、これは一日ですが、公表しましたこども未来戦略方針案では、この若者、子育て世代の所得向上に向け、賃上げに取り組むとともに、三位一体の労働市場改革を加速するほか、非正規雇用の方々の正規化などに取り組むこととしております。あわせて、次元の異なる少子化対策として、ライフステージを通じた子育てに係る経済的支援の強化や、共働き、共育ての推進などに取り組むこととしております。

若い世代が希望どおり結婚をし、そして希望する誰もが子供を持ち、安心して子育てができる社会の実現に向け、若者、子育て世代の所得向上と、そして次元の異なる少子化対策、これを車の両輪として推進していくことが重要であると考えております。

岸田文雄首相

○委員長(佐藤信秋君)

ありがとうございました。

最後に、三番目の質問であります。

エッセンシャルワーカーの待遇改善ということでお伺いいたします。

岸田内閣においては、新しい資本主義の実現を掲げられ、成長の果実をしっかりと分配することで初めて次の成長が実現する、大切なのは成長と分配の好循環であり、成長も分配も実現するためあらゆる政策を総動員することに主眼を置いています。

その中でも重要な政策は、成長の果実を分配する労働者の賃上げです。現場で働く建設労働者や運輸労働者といったエッセンシャルワーカーは、他産業と比較して労働時間が長いにもかかわらず、賃金水準が二割低いといった現状があります。加えて、働き方改革関連法の適用により、これまで四週六休、例えばですね、であった勤務体制が四週八休となると賃金が更に低下する懸念があります。いわゆる二〇二四問題です。

これでは、高齢化や労働人口の減少に伴うエッセンシャルワーカーの人手不足の解消は見込めないままですし、経済成長の悪影響にもなりかねません。他産業と同様の賃金を確保するためには、物価上昇分を加えた賃金単価の引上げ等の待遇改善が急務です。

政府は、これまで実施してきた経済対策を含む各種施策の効果を的確に分析するとともに、それらが我が国の経済、国民生活、そして各産業の労働者の賃金にどのような影響を及ぼしているかを把握する必要があります。その上で、成長と分配により、効果のある施策を講じていくべきです。

二〇二四年問題への対応を含め、総理の所見を伺います。

佐藤信秋

○内閣総理大臣(岸田文雄君)

御指摘のこの建設業あるいはこの運輸業等の分野におけるこのエッセンシャルワーカーの方々は国民生活や経済活動を支える不可欠な存在であり、二〇二四年問題への対応を含め、その待遇改善、これは重要な課題であると認識をしております。政府としては、賃上げに向けて政策を総動員して取り組んでいるところであり、引き続き、効果的な政策の在り方について議論を進め、必要な施策を着実に推進してまいります。

その中で、建設業については、公共工事の設計労務単価、プラス五・二%と、最近のこの物価上昇を上回る引上げ、これを行いました。あわせて、資材価格の上昇を反映した請負代金の設定や、この適正な工期確保が図られるよう、取引の適正化に向けた環境整備、これを進めてまいります。

そして、いわゆるこの二〇二四年問題が懸念されているトラック運輸業、運送業については、今月二日に取りまとめたこの政策パッケージに基づいて、まずは、トラックGメンの設置など荷主への監視体制を緊急に強化して商慣行の見直しを図るほか、物流の効率化や荷主、消費者の行動変容に取り組むとともに、次期通常国会での法制化も含め、抜本的、総合的な対策を進めてまいりたいと考えております。

岸田文雄首相

○委員長(佐藤信秋君)

ありがとうございました。

以上で私の質疑を終わります。