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2013/9/26(木)
新聞記事
平成25年9月26日 建設通信新聞



品確法改正の行方
担い手確保を発注者責務に
工事に特化した新公共調達法








インフラの新設だけでなく、災害対応や老朽化するインフラの維持・修繕や改修の担い手である建設業や、公共事業の設計・コンサルタントの確保を、発注者の責務として新たに追加する「公共工事品質確保促進法(品確法)改正」をてこに、国だけでなく地方自治体の入札契約に対する考え方を大きく変える動きが本格化してきた。次期通常国会への提出方針をほぼ決定付けた、19日の自民党公共工事品質確保に関する議員連盟の公共工事契約適正化委員会(野田毅委員長)の議論を通じて、今後の展開をひもとく。

今後の消費税増税をにらみ景気腰折れを防ぐための投資減税など税制改正議論を自民党税制調査会会長としてリードする野田公共工事適正化委員長は19日、階下の税調インナー会議(幹部会合)会合場所前にあふれる報道陣を振り切るように駆け上がり、適正化委会合に飛び込み、国土交通省の説明後、こう言い切った。

「内容が濃い検討になっている。われわれも議員立法だから(改正へ)実現に向けて進めていきたい」

この発言を会合出席者は、会計法や地方自治法を盾にこれまで問題が解決しなかった入札契約制度を、品確法改正によって抜本的に変えることを自民党が主導して行うことの宣言と受け止めた。

品確法が改正されれば、2004年の品確法提出前にも検討されながら断念した公共調達の予定価格上限拘束性撤廃や、これまで公共発注者が意図的に回避してきた随意契約方式を多様な入札方式の1つと位置付ける施策が実現する。

その最大の理由は、現在の品確法が発注者責務として品質確保を規定していることに対し、今後の改正で新たに中長期的な担い手確保配慮を発注者責務として付け加え、多様な入札方式の体系化と予定価格のあり方についても明記することで、設計・コンサル・工事に限定した公共調達基本法の性格を持つことになるからだ。

これまで公共調達は単品受注生産物である工事も製品である物品もひとくくりにされ、会計法と地方自治法の調達規定の中で運用されてきた。

今後、改正品確法が公共工事に関連する「公共調達基本法」の性格を持てば、公共発注者は会計法と地方自治法に基づきながらも、工事や設計の公共調達だけは改正品確法を根拠法の基本とする、いわゆる「横出し法」の位置付けになる。

予算の適正執行を目的にした会計法や会計法の上位法で年度ごとに決められた支出額を管理する目的の財政法を所管する財務省もこれまでの自民党適正化委で、予定価格に柔軟な見解を示してきた。野田委員長が「(安値を強いる)発注者は予決令違反。実例価格しか重視していない」と予決令80条2項規定を念頭に問い詰めたが、財務省は「予定価格の考え方は決して安さ追求という位置付けではない。契約の内容や状況に応じたきめ細かな配慮が必要」と応えていた。

品確法改正と多様な入札方式導入拡大へ向けた動きが加速しているもう一つの理由には、昨年の総選挙と今夏の参議院選挙結果による政治の安定化と、安倍政権による景気回復と中小・小規模企業の活力重視の政策がある。さらには東日本大震災を契機にした災害対応の担い手でもある建設業が、他産業と比較して経営悪化と就業者の高齢化・人材確保難に陥っている現実がある。

19日の会合でも改正品確法や制度改正の方向性について、「地域の建設業とはっきり明記すべき」との指摘が相次いだ。

大きく動き出した品確法改正だが、市町村までを含めて改正品確法に基づく公共調達を行うための仕掛けなど、クリアしなければならない宿題もある。

さらに、予算確保後に官積算を上回る発注金額にならざるを得なくなったケースにどう対応するのか。具体的な法案作成検討を行う自民党にとっては今後、財務省も交えて課題解決に向け整理しなければならない難問もなお多く正念場が待ち受けているのも事実だ。

◆改正品確法案 想定される主なポイント

■従来の品確法

(1)公共工事の品質確保を基本理念に発注者の責務を明記

(2)価格と品質で総合に優れた調達、総合評価を明記

(3)発注者支援に言及

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■改正されると

(1)発注者責務として、品質確保に加え「中長期的な担い手確保配慮」も明確化

(2)事業特性に応じて多様な入札契約方式を体系的に位置付け(交渉方式、CM、複数年契約、複数業務の一括発注、要件に合致した地元団体の共同受注など明記)

(3)予定価格のより適正な設定を明確化(歩切り防止の徹底、新たな契約方式に対応した予定価格のあり方を明記)

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◆公共工事と設計・コンサル関係の公共調達に特化した、公共調達新法の役割に

◆国、地方自治体で多様な入札方式が可能に

◆発注者責務として担い手確保配慮を明記することで、担い手である建設業存続も視野にした、さまざまな対応が可能に

◆品確法をめぐるこれまでの経緯

■2002年12月
自民品確議連の前身、品質確保向上研究会が「ダンピング受注排除緊急対策」
■03年6月
自民研究会が発展解消の形で、品確議連として発足
■04年5月
自民独禁法調査会、独禁法改正案提出先送りを決定(課徴金引き上げや減免制度導入の改正法は06年1月施行)
■04年夏
自民議連、品確法案とともに模索していた予定価格上限拘束性撤廃を視野にした会計法改正を断念
■04年11月
議員立法として臨時国会に品確法提出
■05年4月
品確法施行