2014/4/7(月)
新聞記事
平成26年4月7日 建設通信新聞




品確法改正案、参院で可決
多様な入契モデルも検討








「公共工事の品質確保の促進に関する法律」(品確法)の改正案と、建設業法などの改正案が4日の参院本会議に提出され、全会一致で可決された。直ちに衆院送付され、月内の成立も現実味を帯びてきた。成立すれば、中長期的な担い手の確保を発注者責務として新たに規定し、ダンピングの防止に向けた予定価格の適正な設定や、事業特性に応じた入札制度の活用による適正な利潤確保などが実現することになる。国土交通省でも、両案の成立に先駆けて予定価格の設定のあり方に関する議論を本格化しているほか、自治体での多様な入札契約方式の実施に向けた運用指針の策定作業が始動する。

品確法の改正案は、閣法として提出している建設業法などの改正案とともに一括で採決。議員総数230人の全会一致で可決した。提出した藤本祐司国土交通委員長は、「建設投資の減少でダンピングや行き過ぎた価格競争が増加し、建設企業の疲弊や下請けへのしわ寄せ、就労環境の悪化が生じて公共工事の品質確保に大きな懸念が寄せられている」と提案の趣旨を説明し、改正案への賛同を求めた。

法案は3日に開いた参院国交委で委員長提案として提出されている。これは、議員立法を提出する際に与野党が法案への賛成を事前了承し、委員会へ委員長が提案する形。委員長提案となると、提案後即日で了承されるのが通例だ。与野党で法案を事前承認しているため、送付された衆院でも円滑に成立する公算が高い。衆院国土交通委員会では審議する法案が政府提出法案だけで11本あるものの、与党や国交省が品確法と建設業法などの一体改正を目指している流れからしても審議の優先度は国会内でも高いとみられる。4月半ばから5月上旬ごろの成立が有力だ。

法案が成立すれば、発注者責務として新たに中長期的な担い手確保への配慮を規定するため、市場や実態とかい離している予定価格の適正な設定や、ダンピング防止に向けた最低制限価格などの導入、工期の適切な設定、設計変更・契約変更の円滑な実施などが促進されることになる。こうした取り組みを受注者の適正な利潤の確保や下請けへのしわ寄せ排除にもつなげ、インフラの品質確保とその担い手である建設業の環境改善に生かす。そのツールとして、事業特性に応じて多様な入札契約制度を選択できる仕組みを規定。例えば、技術提案を公募して選定した企業と価格などを交渉する「技術提案・交渉方式(仮称)」の活用により、予定価格の決定に柔軟性を持たせる。工事の難易度が高いものの採算性の低い維持修繕工事を中心に複数年契約や共同受注、複数工事の一括発注なども活用し、ロットを拡大することで受注企業の採算性を向上させる。

法律の運用に向けた動きも、既に活発化している。国交省は、3月末に開いた「発注者責任を果たすための今後の建設生産・管理システムのあり方に関する懇談会」で、予定価格の設定のあり方に関する議論に着手。価格の変動局面でもその状況を反映できるよう、幅のある実勢価格を踏まえた予定価格の設定を検討する。また、企業が適正な利潤を確保するには、機材の保有や人件費の確保、技術開発の促進が不可欠とみて、一般管理費の算定方法も新たに模索していく。さらに、概算数量発注方式の活用も検討し、契約変更の適切な実施を下支えする。

多様な入札契約方式の活用を推進するために、新たな入札契約方式導入に取り組む自治体を支援する「多様な入札契約方式のモデル事業」の実施に向けた作業も国交省で始まっている。5月にもモデル事業を選定するための事務局業務を委託し、公募手続きなどを進める見込みだ。