2015/3/11(水)
記事
「全測連」第四六巻 平成二十七年一月発行




特別寄稿
「国土強靱化と測量設計業の担い手確保めざして」





国土と建設産業の再生のために、私達は何をなすべきなのでしょうか。全測連の皆様のご意見を頂きながら、私が実行に努めさせて頂いていることの一端を報告させて頂きます。

国土の守り手としての測量設計業の再評価

誰が国土を守っていくのか、もちろん国民全体ですが、多少その担い手を考える上で、数字を挙げてみたいと思います。災害や日常の雇用の面から考えて見ます。全国の消防職員、警察官、自衛隊員等、日常の業務として、災害や危機管理に備える皆様は、合計で66万人です。この他消防団員、水防団員計88万人がいますが、非常勤で、多くは、建設産業や農業の人達が担っています。そして全測連の皆様をはじめ建設産業に働く人達は約500万人、ピーク時に比べると、大幅に減り、高齢化が進んでいますが、それでも消防、警察、自衛隊員の約10倍近くの人材が働いています。東日本大震災などの大災害の例を見るまでもなく、いざという時、全国津々浦々に働く、地域の建設産業、特に測量設計業の皆様がいなければ対応出来ません。どのように地形、地盤が変わったか、どう復旧するか、調査、測量、設計が何よりの急務です。国土を守り、支える、という面から、その担い手としての測量設計業をはじめとする建設産業が改めて再評価されつつあると思います。

建設産業の疲弊を招いた理由

この20年間、わが国の建設産業は疲弊しつづけてきました。もちろん理由はハッキリしています。売り上げ高の減少、赤字、従業員の賃金、給料のカットです。若者達に魅力のない産業になってしまいました。特に測量設計業をはじめとして若手技術者が少なくなってきました。大切なことは、その原因と処方箋です。

建設売り上げ高減少の主因は公共投資削減

公共投資に頼らなくても、民間投資があれば、と良く言われます。事実はどうなのでしょうか。私は公共投資削減が、民間投資の減少ももたらしている、と考えています。経済・財政の運営の考え方をどう考えるか、という基本論の問題でもありますが、国内の総建設投資は、総公共投資に比例しているのです。つまり公共投資を削れば民間投資も減るのです。20年近く前、総建設投資額は、84兆円、うち公共投資32兆円約4割、23年度総投資42兆円、うち公共投資17兆円、約4割。建設産業の総売り上げは、公共投資と比例、と私が言うのは、こうしたデータも含めてです。

デフレの主因は建設産業の売り上げ減

言い過ぎ、かも知れませんが、こう言ってます。結果論から言っていますが、20年近く前の我が国GDPの名目値は最大520兆円でした。平成23年度GDPは471兆円、約50兆円超の減です。これは、この間の、総建設投資の減、約40兆円に近いのです。つまりこの間の名目GDPの減少は、建設売り上げの減少分なのです。この間続いたデフレは、公共投資の減少であり、建設投資の減少が主因、と言っても良い、と私は考えています。

過当競争、ダンピングが建設産業にダメージ

建設の総需要は、国の政策に依存しています。国の政策として、建設総需要を削っておいて、供給側には、ヒタスラ競争して下さい、と強要する方がおかしいのです。自民党政権の頃の20年近く前から緊縮財政でしたが、5年前の民主党政権の、いきなり公共投資2割カットは、産業も、経済・財政も、国土の将来も考えない愚策と言うしかありません。コンクリートから人へ、そして過当競争とダンピングを強要したようなものです。

測量設計業の再生は国土強靱化の為に必要

少子高齢化の流れに歯止めをかけ、荒れ果てようとする国土を再生するには、建設産業を再生する必要があります。そのためには、政策的に削り過ぎて来た建設投資をこれ以上削減しない、できない、とメッセージを明確に出し、中長期的に建設投資が、一定規模必要とのメッセージを政府がださなければいけません。そもそも、防災、減災、老朽化対策、国土強靱化を考えると、これ以上公共投資を削ることはできません。国土強靱化と国土再生、建設産業特に、測量設計業等の担い手、若手技術力の再生が待った無しで明確化すべき政策方向なのです。

国土強靱化を緊急かつ着実に

迫り来ると言われている大地震や大災害に備えて、平成25年12月に国土強靱化基本法が成立しました。私自身はこれを「民間と公共、ソフトとハード、エネルギーと情報を強化し、地方分散型、代替拠点、国土軸の形成」を目指し、公共投資の計画的、着実な実行と、建設産業の必要性を国民にメッセージ出すもの、と申し上げています。

国土管理の担い手確保のための品確法改正

建設産業の再生をめざす上では将来にわたる量の見通しと仕事の質の確保が重要です。平成26年6月に脇先生をはじめ、関係者の努力で品確法の改正が成立しました。公共事業の品質確保のためには、調査、測量設計から工事まで、企業経営の安定、企業の適正な利潤の確保が発注者の責任と明記しました。そして、何よりも建設産業の中長期的な担い手確保が重要であり、働く人達、技術者の賃金、給料、安全衛生の改善を発注者、受注者の義務としました。与野党全党一致で可決成立しました。全測連の皆様の「担い手確保が必要」との危機意識が各層に反映されたからと思っています。これから実際の適切な運用に向けて全測連の皆様からの御意見、ご指摘を一層反映するように力を尽してまいります。