2018/12/19(水)
新聞記事
平成30年12月17日 建設通信新聞 

3カ年緊急対策に7兆円
浸水、土砂災などに3兆円

政府は14日の閣議で、防災・減災、国土強靭化のために3カ年で取り組む緊急対策と国土強靭化基本計画の改定を決定した。3カ年の緊急対策の事業規模は財政投融資の活用を合め、おおむね7兆円、国費ベースでは3兆円台半ばとなる。対策の初年度に速やかに対応すべき事業については2018年度補正予算で対応し、19、20年度は通常予算に上乗せする形で、緊急的かつ集中的に対策に取り組む。

緊急対策は重要インフラの緊急点検やブロック塀、ため池に関する既往点検の結果を踏まえ、160項目について防災や国民経済・生活の観点からハード・ソフト対策を集中的に実施する。計画期商は18年度から20年度で、対策を完了(概成)または大幅に進捗させる。

緊急対策の事業費の内訳は、大規模な浸水、土砂災害、地震・津波などによる被害の防止・最小化に3兆円、陸海空の交通ネットワークの確保に2兆円、食糧供給、ライフライン、サプライチェーンの確保に1兆円を充てる。救助・救急、医療活動などの災害対応力の確保は4000億円、電力などエネルギー供給の確保は3000億円、避難行動に必要な情報などの確保は2000億円、生活などに必要な情報通信機能・情報サービスの確保に200億円を措置する。

総事業費7兆円のうち財投の事業規模は6000億円。日本高速道路保有・債務返済機構が高速道路の暫定2車線対策などに5000億円、関西国際空港が護岸、防潮堤のかさ上げに40億円をそれぞれ活用する。そのほか、民間負担を3000億円想定する。


国土強靭化基本計画を初改定

国土強靭化基本計画は、14年度の策定から5年が経過することから、策定後に発生した災害や重要インフラの緊急点検の結果を反映することで内容の充実を図った。具体的には、気候変動の影響を踏まえた治水対策や新技術の活用、国土強靭化のイノベーションの推進、ソフト・ハード両面におげる除雪体制の整備、廃棄物処理システムの強靭化などを追加。災害時に重要なインフラ整備と耐震対策・老朽化対策は引き続き進めることとする。

特に配慮すべき事項としては、官民連携の促進と民主導の取り組みを活性化させる環境整備や国土強靭化のイノベーション、仙台防災枠組で打ち出された事前防災の実践、18年6月以降の災害からの教 訓を踏まえた対策などを位置付けた。


建設工業新聞


国交省所管は67項目
防災・減災、強靭化3カ年緊急対策

政府が14日に閣議決定した「防災・減災、国土強靭化のための3カ年緊急対策」のうち、国土交通省の所管分野における緊急対策は計67項目。国土強靭化の推進を目的に、2020年度までの3年間で対策を完了(概成)または大幅に進捗させる方針だ。

「重要インフラの緊急点検」の結果を受けて、河道掘削・樹木伐採(河川)、法面対策(道路)、空港の電源設備等の浸水対策(空港)、河川橋梁の橋脚基礎部分の補強(鉄道)などに取り組む。


【国土交通省が所管する主な「3カ年緊急対策」の考え方と達成目標】

■河川
《全国の河川における洪水時の危険性に関する緊急対策》
近年、浸水実績がある箇所または想定浸水区域の家屋数が一定以上ある個所または重要施設がある約2,340河川で緊急対策を実施
→氾濫による危険性が特に高い区間で樹木・堆積土砂等に起因した氾濫危険性の解再をおおむね完了
《全国の河川における堤防決壊時の危険性に関する緊急対策》
甚大な人命被害等が生じる恐れがある区間を有する河川約120河川の緊急対策を実施
→堤防決壊が発生した場合に湛水深が深く、特に多数の人命被害等が生じる恐れのある区間で堤妨強化対策などをおおむね完了
■砂防
《全国の土砂災害警戒区域等における円滑な避難の確保に関する緊急対策》
緊急性の高い約620力所で緊急対策を実施
→土砂災害により、避難所・避難路の被災する危険性が高い個所のうち、緊急性の高い個所で円滑な避難を確保する砂防堰堤の整備などの対策をおおむね完了
■下水道
《緊急輸送路等に布設されている下水道道路に関する緊急対策》
過去に液状化が発生した埋立地区等の緊急性が高い地区でマンホール浮上防止策(約200キロ)、管路の耐震化(約600キロ)などの緊急対策を実施
→緊急輸送路等における緊急車両の交通機能障害等のリスク低減策が必要な箇所で対策をおおむね完了
《全国の内水浸水の危険性に関する緊急対策》
下水道事業を実施する約200の地方公共団体の緊急対策を実施
→近年、浸水実績があり、病院、市役所など、生命や防災上重要な施設の浸水が想定される箇所で、近年の主要降雨などによる重要施設の浸水被害を防止軽減するため、雨水排水施設の整備等の対策をおおむね完了
■道路
《道路法面・盛土等に関する緊急対策(法面・盛土対策、道路拡幅等)》
約2000カ所で土砂災害等に対応した道路法面・盛土対策、土砂災害等を回避する改良や道路拡幅などの緊急対策を実施
→幹線道路等で豪雨により土砂災害等が発生するリスク箇所の対策をおおむね完了
《道路橋・道の駅等の耐震補強に関する緊急対策》
約600カ所の橋梁で緊急対策を実施 →幹線道路等で緊急輸送道路上の橋梁のうち、今後30年間に震度6以上の揺れに見舞われる確立が26%異常の地域にある橋梁の対策をおおむね完了
■港湾
《全国の主要な外資コンテナターミナルに関する緊急対策》
浸水被害リスク、地震リスクが高く、対策が実施されていない施設のうち、事業の実施環境が整った施設の緊急対策を実施
→コンテナ流出対策約30施設、電源浸水対策約20施設、耐震対策約5施設の対策をおおむね完了。各種災害に対する港湾BCPの充実化が必要な約40港のBCPの充実化を完了
《全国の主要な緊急物資輸送ターミナルに関する緊急対策》
地震時の緊急物資輸送に十分に対応できない恐れがある施設のうち、事業の実施環境が整った施設の緊急対策を実施
→耐震強化岸壁の整備約10施設をおおむね完了。各種災害に対する港湾BCPの充実化が必要な約70港のBCPの充実化を完了
■鉄道
《豪雨による鉄道河川橋梁の流失・傾斜に関する緊急対策》
施設の現状を踏まえて、緊急性の高い橋梁(約50カ所)で緊急対策を実施
→利用者数が多い線区などで豪雨により流失・傾斜の恐れがある鉄道河川橋梁約50カ所の対策をおおむね完了
《豪雨による鉄道隣接斜面の崩壊に関する緊急対策》
施設の現状を踏まえて、緊急性の高い鉄道隣接斜面(約190力所)の緊急対策を実施
→利用者数の多い線区などで豪雨により崩壊の恐れがある鉄道隣接斜面約190カ所の対策をおおむね完了
■空港
《航空輸送上重要な空港等に関する緊急対策(基本施設)》
約6空港で護岸のかさ上げや排水機能強化による緊急対策を実施
→特に浸水の可能性が懸念される箇所の対策を完了
約3空港で滑走路等の耐震対策による緊急対策を実施
→滑走路2,500m以上の耐震対策を完了
《航空輸送上重要な空港等に関する緊急対策(ターミナルビル)》
約7空港でターミナルビルの電源設備等への浸水対策による緊急対策を実施
→特に浸水の可能性が懸念されるターミナルビルの電源設備等の浸水対策をおおむね完了
約12空港でターミナルビルの吊り天井の安全対策による緊急対策を実施
→ターミナルビルの吊り天井の安全対策をおおむね完了

建設工業新聞