2021/2/22(月)
新聞記事
令和3年2月22日 建設通信新聞
建設通信新聞

新労務単価
1.2%上昇、9年連続引き上げ
低下単価は前年同額に据置き

国土交通省は19日、3月から適用する「公共工事設計労務単価」を発表した。今回の単価は新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ、前年度を下回った単価を据え置きとする特別措置を実施。その結果、全国の全職種平均(単純平均値)は1.2%(2020年3月比)の伸び率を維持し、9年連続での上昇となった。全職種の平均金額(加重平均値)は2万0409円で、前年度に引き続き、単価の公表を開始した1997年度以降で最高値を更新した。

同日の閣議後の記者会見で、新たな労務単価と技術者単価を発表した赤羽一嘉国交相は、「賃金の引き上げが労務単価などの上昇を通じて、適正利潤の確保やさらなる賃金の引き上げにつながる」と強調。「改定後の単価の水準などを踏まえて適切な請負代金で計画し、技術者・技能労働者の賃金水準が改善されるよう努めていただきたい」と呼び掛けた。

労務単価は公共工事に従事した労働者に対する賃金の支払い実態などを集計した「労務費調査」(昨年10月に実施)の結果をベースに設定している。ただし今回の単価設定に際しては、新型コロナの影響による経済の先行きの不透明感から一時的な賃金抑制が発生したと判断し、各職種別に都道府県ごとで算出している単価が前年度を下回った場合には、同額に据え置く特別措置を講じた。

全体の地域・職種の42%が前年度比でマイナスとなり、特別措置の対象となった。特別措置を講じなかった場合の全職種平均の伸び率は0.4%で、特別措置により0.8ポイント底上げした格好だ。

直轄工事は3月1日以降に契約する案件から適用を開始する。20年度第3次補正予算など公共事業の円滑な執行を目的に、通常は4月となっている改定のタイミングを今回も前倒した。

今回の傾向をみると、全国的に前年度比で伸び率が低下。東京都(1.4%)や大阪府(1.4%)など都市部の方が多少高い伸び率となっている。沖縄県が0.4%で伸び率が最低。訪日客の減少を受け民間のホテル需要などが激減し、その影響が波及した可能性が高い。

職種別でも、総じて伸び率が低下。主要職種の中でも鉄筋工(0.2%)や特殊作業員(0.3%)、普通作業員(0.3%)などは特別措置がなければマイナスに転じていた可能性もある。

ドライバー不足などが問題となっている運転手(一般、1.7%)や一昨年、約7%と飛び抜けて上昇した交通誘導警備員(A、Bともに2.1%)など一部職種では平均値以上の伸びとなっている。


団体トップコメント

国土交通省が19日に公表した公共工事設計労務単価に対し、建設業団体のトップからは9年連続となる引き上げを歓迎するコメントが相次いだ。下請業者との適切な契約の徹底にも言及している。


円滑な施工を確保
山内日建連会長

日本建設業連合会の山内隆司会長は、「公共工事設計労誓価の引き上げは、建設技能者の処遇改善に不可欠なもの」とした上で、日建連が発表する「労務費見積り尊重宣言」に沿って「適切な労務賃金の支払いを進め、公共工事の円滑な施工に万全を期すとともに、防災・減災、国土強靱化の着実な推進にも貢献していく」と強調する。さらに長期的な単価引き上げを要望している。


処遇改善に期待
奥村全建会長

全国建設業協会の奥村太加典会長は、補正予算発注工事に合わせ、新単価が3月1日から適用されることに触れつつ、「全国全職種加重平均値は2万0409円となり最高値を更新し、働き方改革や建設技能者の処遇改善への効果に期待している」と話している。また、「設計労務単価引上げ分アップ宣言」に基づいて「今回の改定が下請企業との契約で適切に反映されるよう取り組む」考えを示す。


一丸で取り組む
土志田全中建会長

全国中小建設業協会の土志田領司会長も新単価の前倒し適用、全国全職種加重平均の3年連続の過去最高値更新、コロナ禍を踏まえた特別措置に謝意を表した上で、「当協会としては、働き方改革に向けての環環整備を進めている中で、労働環境の改善、週休2日制の実施、適正な労務賃金の支払いなど、全国の会員団体・会員企業が一丸となって取り組んでいく」との意欲を見せている。